「好きなことを仕事にする」という言葉は、好きなことが何かわからない人にとっては、しんどくなる言葉かもしれません。
そもそも、好きなことを持たなければならないという概念はないんです。誰かがつくりだしたもの。
「好きなことがない人はどうしたらいい?」
フリーランス演奏家、吉田佐和子さんに尋ねてみました。
「行動するハードルを下げる」「いろんな場所に身を置いてみる」でもいいのではないでしょうか。
吉田 佐和子(よしだ さわこ)
1986年、京都府福知山市生まれ。クラリネット奏者。コンテンツプロデューサー。福知山の魅力発信WEBマガジン『ふくてぃーやま』編集長。音大卒業後、1年間高校音楽科の非常勤講師をつとめ、フリーランスの演奏家へ。福知山・大阪・東京の三拠点生活を経て、現在は夫の転勤地であるフランス・パリ在住。
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三拠点生活を実現できたのは、行動するハードルを下げたから
筆者が吉田佐和子さんと出会ったのは1年半前。たまたま足を運んだコンサートに出演されていたことがきっかけでした。
話を聞いてみると「福知山」「大阪」「東京」で三拠点生活をしているとのこと。(現在はフランスのパリ!)
1つの場所にしか住んだことがないわたしにとっては、3つの場所に住むなんてあり得ないことでした。
東京に行くことを決めた理由は、やりたいことを実現できる場所だと思ったから
佐和子さんが住んでいた東京の江古田。演奏可能物件んがたくさんあるそう。
ーー福知山、大阪に加え、東京でも家を借りられていましたよね。たいていの人は「旦那どうする?」「家賃を2か所も払う?」と辞めてしまいます。佐和子さんはどうして行動にうつせたのですか?
佐和子さん:自分が暮らす環境は選べるものなので、常に自分のやりたいことを実現できる場所に居たいと思っています。「大変なことをやる」って思ったら動けなくなっちゃうので、思い切った決断をするときほど、自分の中で行動することへのハードルを意識的に下げるようにしています。大阪から東京へ行くときも、隣町にいくようなものだ、的な感じでハードルを下げてましたね。
ーーすごい行動力ですね。
佐和子さん:自分ではあんまり行動力があるとは思ってないんですけど、「この力が身についたら行動を起こす」っていうんじゃなくて、「いまは思ってるような力がないけど、一番成長出来る場所に身を置いて自分の力を磨く!」っていうのは常に意識してますね。違和感を感じている場所で試行錯誤してみても苦しいのであれば、そこにずっといる必要はないかなって思います。
ーー行動するためには何が大事ですか?
佐和子さん:行動を起こすためには、何かきっかけが必要ですよね。
例えば、次の4つのもののうちどれかがあれば人は動くわけです。
①どうしてもやりたいことがある
②行動できるお金がある
③周りの人の応援がある
④決定打になる出来事がある
どれが一番行動の引き金になるのかは人によって違うと思うんですが、例えば、誰かに応援してもらったら行動を起こしやすい人は、さっさと応援してくれる人に相談するのがオススメです。
行動の引き金になるものを知って、行動しない理由を消していけば行動するしかなくなります。自分の性格をきちんと理解していれば大丈夫だと思います。
帰国してからの拠点先はどこ?
佐和子さんの故郷・福知山市の風景
ーーフランスから帰国したらどこに拠点を置く予定ですか?
佐和子さん:福知山でやりたいことがあるので、とりあえず福知山にはいると思うんですけど音楽家って演奏して!ってお願いされたら色んな場所に行くのが当たり前なので、きっとまた飛び回ってそうですね。自分でも未来がどんな風になるのか楽しみです。
行動できる場所に行き、まわりに巻き込まれる
やる・やらないの基準がはっきりしている潔さ
音大卒業後、高校音楽科の非常勤講師を1年で退職した佐和子さん。「とりあえず3年」ということばはもう死語かもしれません。
ーー佐和子さんの潔さはどこからくるの?
佐和子さん:多分「やる、やらないの基準」がはっきりしてるんだと思います。自分にあったものに取り組んでいるときは時間があっという間に過ぎていくし、大変だけど心地いい。そういうことはどんどんやりたくなります。でも、やらない方がいいことは時間の感じ方が真逆なんですよね。 心が死んじゃう感じがします。
ーー心が死にながらも我慢して会社に行っている人が多いですよね。
佐和子さん:今はそういう人も今は多いのかもしれませんね。会社を辞めるかどうか迷っている人は、「会社を辞める=過去に頑張った自分を否定している」と思っている人もいるように思います。でもそれって、未来の自分の可能性をつぶしてるんじゃないでしょうか。過去の自分と未来の自分を肯定するために「辞める」という決断をすればいいんです。
ーーやりたいことが明確だから退職するのも悩まなかったのですか?
佐和子さん:一応、というかちゃんと悩みました!(笑)でも、悩んだときに何を一番優先したいのか?紙に悩みを書き起こして徹底的に考えたんです。
わたしは悩んでいる→なんで?→先生の仕事がしんどい→なんで?…というように、浮かんでくる思いに「なんで?」と聞いて、1人で自問自答しながら答えを探しました。あるとき、毎日延々と考えてても解決しないな、と思ったので、将来について考える時間をがっつりとって決断しました。
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勉強は意志力がないと続けられるけれど、悩むことは意志力がなくても続けられる
ーー悩むけれど、決断するまでの時間がはやいですね。
佐和子さん:悩みって突然やってきて一気に心を蝕むんですよね(苦笑)あと、脳は強い衝撃を感じると快感を覚えてしまって、良いことでも、悪いことでも、快感に感じてしまい、もう1回体験しようとしてしまうんです。
だから同じ悩みを抱えてしまうことになるんですよね。でも、そんな風に自分を攻撃してしまう人は脳科学について知っておくと「あー、脳が快感を得たいと思ってまた悩ませようとしてるな」というように、ちょっと俯瞰して自分のことを見れるようになりますね。
好きなことがない人は、いろいろな場所に身を置いてみる
好きなこと、得意なことはなくてもいい
ーー現状に違和感はあるけれど、好きなこと・得意なことがない人はどうしたらいいでしょうか?
佐和子さん:現状に違和感を感じたときに、まずは何に違和感があるのか?何を変えればいいのかをしっかり把握することですよね。それを曖昧にしてると、どれだけ環境を変えても本質的な問題は解決しなかったりしますから。ただ、好きなこと・得意なことって絶対ないといけないものではないので、なければなくても大丈夫です。それらがあってもなくても、辞めたいなら辞めても大丈夫だと思います。
ーー好きなことを仕事にしている人は輝いて見えるもの。好きなことを見つける方法はありますか?
佐和子さん:他人から褒められたり求められた機会を重ねていくといいですよね。「すごいね!」とか「これを教えて欲しい!」と言われたときに、人に見える場所で発信して残すのがいいと思います。小さな行動を積み重ねることで、更に周りの人に求められることになるし、それが好きなことを仕事にするにつながるはずです。
ーー『周りの人に求められる機会』を少しずつ増やしていくことが好きなことを仕事にすることにつながっていくこともあるんですね。
佐和子さん:誰かに求められたことに取り組んでいるときを心地良く感じるのであれば、それが近い将来「好きなこと」や「得意なこと」になる可能性があるし、それがなくても何も焦らなくていいと思います。
ーー誰かに求められたことが、好きなことになるっていいですね。
佐和子さん:今は『自分の好きなことで道を切り開いていく』のが良いような風潮があるけれど、『周りに求められることで道を切り開いていく』まで心地良い時間を過ごせているなら、それは好きなことだったり、得意なことだったりするはずです。なので、必ずしも好きなことを仕事にする必要はないのかなって思います。
あと、好きなことを見つけられない人は、いろいろな場所に身を置いてみて、「ハマる」場所を見つけたらいいと思う。例えば田舎と都会、どちらにいる自分が好きなのか?好きな自分で居られる場所に身を置いてみると、自分の新しい側面が見れたりしてまた視点も変わると思います。
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コンプレックスは付き合い方次第
みなさんが行動できない理由の1つに「コンプレックスがある」という理由があると思います。コンプレックスとの付き合い方について聞いてみました。
ーー佐和子さんにコンプレックスはありますか?
佐和子さん:ありますあります。きっとみんな何かしらあるんじゃないですかね。これはコンプレックスっていうか劣等感だと思うんですけど、昔はよく自分はダメな人間だ!って自分で自分を責めてましたね。
ーーもしかしてわたしって二重人格?と悩んじゃったり。
佐和子さん:そうそう。でも、色んな自分があるのが普通なんですよね。実在している自分は1人しかいないけど、感情を決めるときには色んな自分がいると思っていた方が心が楽になりますね。
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何かをやり遂げないと評価されないっておかしくない?
やりたいことがあってもまわりの目が気になってなかなか行動できない、公表できない人はたくさんいると思います。無理だよと反対されただけで委縮してしまったり。
ーー佐和子さんはクラウドファンディングを成功させてコンサートを開催したり、CDを1か月200枚発売したりとやり遂げていることがたくさんありますね。
佐和子さん:色んな人の応援のおかげで達成出来たことばかりです。わたしは達成型タイプなので、いつも何か目標を決めて、それに向けて頑張るのが好きなんですよね。
ーーなかなか行動できないモジモジくんにメッセージをお願いします。
佐和子さん:なかなか行動できない人は『行動したほうがいい情報』のストックが足りないだけだと思うんです。行動した後に起こる嬉しいことをたくさん考えたり、背中を押してくれる人に相談したりするだけでも行動するぞ!という気持ちが増すはずです。
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佐和子さんのご主人の寛大なサポートとは?
インタビューをしていた時間はパリ時間の朝8時。ご主人の出勤時間になり佐和子さんが「いってらっしゃい」を言いに行く場面を見てほっこりしました。
ーー旦那さんはどんな人ですか?
佐和子さん:わたしが大事に思っていることを大事にしてくれる人です。「これをやりたいんだけど、どう思う?」と聞くと、だいたい「いいけど」という返事がすぐ返ってきますね。
ーー旦那さんは大阪に住んでいて、佐和子さんは東京に住んでいた時期がありましたよね。東京行きは反対されなかったのですか?
佐和子さん:反対はされなかったですね。わたしも拍子抜けしたくらい(笑)
ーー夫婦関係がうまくいく秘訣は何でしょうか?
佐和子さん:夫婦関係がおだやかでいられるのは旦那さんの「寛大さ」のおかげだと思います。自分が大事にしているものを相手も大事に思ってくれていると、おだやかな関係が続けられるんじゃないでしょうか。心から共感してもらえていないと、どうしても摩擦が生じてしまいますよね。
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最後に
いかがでしたでしょうか。
「今の生活に満足はしていないけれど、やりたいことも好きなこともない」という方。
「やりたいこと・好きなこと」はなくてもいいのです。
- 行動するハードルを下げる
- 行動できる場所に行きまわりに巻き込まれる
- いろんな場所に身を置きハマる場所を見つける
これらを意識してみるとあなたが輝ける場所が見つかるはずです。
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